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贄姫
第2章 弍
瓊乱の身体中に電撃が走った。
ああ、これは。
「……お前…」
瓊乱は押し当てた唇を離すのを
ためらうかのように、
触れたままでそうつぶやいた。
もう一度深く触れようとした瞬間
左頬に痛み。
一拍おいてパンと響く音。
頬をはたかれたのだと気づくまでに
瓊乱は少し時間が要った。
なぜなら、瓊乱の頬を叩ける者など
この世には存在しないのだから。
かっと血が上るのが自分でも分かった。
じんわりと瞳の奥が熱くなる。
興奮や怒りを覚えると、瓊乱の瞳は赤く変化する。
わかりやすくて自分では嫌なのだが、女たちには受けが良かった。
「…てめぇ…」
目の前にいる小娘。
殺してやろうかと思ったが
自分のことを恐ろしい顔で睨みつける少女を見て
その気が変わった。
磨けば光る顔立ち。
真っ白できめ細やかな肌。
首筋や鎖骨のあたりの美しさと清廉さは
この年代独特のものだろう。
そしてその痛烈に傷ついた瞳。
射るように睨めつける感情は
絶望と減滅。
感情が昂ぶったのか
白い肌は熱でほんのりと桜色になり
身体に白い刺青がより華やかに浮かび上がる。
はだけた胸元から、その刺青が
美しく浮かび上がる様が見事だった。