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贄姫
第2章 弍
「椿…気に入った。お前はもう俺のものだ」
椿の瞳から、涙がみるみると溜まって
瞬きもしないのに縁から溢れ出した。
「死ぬまで、俺だけのものだーーー覚悟しろ」
振りかざされた手を左手で抑え込み
強く抱きしめると
椿が嫌がる間も与えずに
深く口づけをかわして舌を絡める。
再び瓊乱の身体中に電撃のようなものが走る。
その感覚に気を取られれば
一瞬で自分がダメになるのが分かった。
上り詰めて来る快楽への欲情を抑え
椿の舌に集中し一瞬の隙をみて
絡めて吸い取って歯で柔らかな舌を傷つけた。
「…っつ……!」
痛みに椿がおののくと
唇を離して瓊乱は自分の指をかじる。
ぷく、と指先から溢れ出た血を
椿の口に押し込めた。
「なにするのよっ!」
「契約だよ」
そう言った瞬間、
椿の身体がびくんとはねた。
「なに、したの……!」
全身の血が騒ぎ出して
逆流するような不快感。
あまりのことに椿の身体がこわばる。
動きが取れなくなると寒気が襲ってきた。
瓊乱の唇を、受け入れたくもないのに、動けない。
されるがままに舌を吸われた。
正確には、舌から出る血を
吸われていた。
痛みと朦朧とする意識。
気がつけば、凍るように寒い身体で
瓊乱に触れている所だけが熱を持った。
唇を離すと、
その口に瓊乱は指を入れて
滲み出る血を椿の舌になすりつけた。
その残酷なほどに恐ろしい顔。
美しさは時として、狂気的だった。