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贄姫
第1章 壱
「贄姫…やだ、呪いなんて嘘でしょ?」
その忌まわしい呪いの名前に
あからさまに椿は顔をしかめた。
唸るように押し黙る父親を
焦れて睨みつける。
「私から話しましょう」
重たい空気を割いたのは
周の澄んだ声だった。
その声に、父親が息を深く吐いた。
「なによ、改まって。
その贄姫ってただの昔話でしょ?
散々聞いたわよ、今更何を話すのよ」
椿のイライラを全面に受けてなお
周はそれをかわして彼女の瞳を見つめた。
「お前が知らないことなんていっぱいあるんだよ。
少し説明が必要だ。きちんと聞け」
「あんたね…めっちゃムカつく。いいわ聞いてあげる。
ロクでもない話だったら、後で木刀でひっぱたいてあげるわ」
やれるもんならな、と周はクールな瞳で椿を制した。
なんとなく椿は恐怖を感じていた。。
「まず、英家が、陰陽師の家系だ。
だから、お前のご両親は全国津々浦々、妖退治に引っ張りだこだ」
周の言葉に今更なにを言ってるのだ、と
椿は鼻で笑った。
「知ってるわよ。だからこんな半分森の中にある
古めかしくて
だだっ広い家に住んでるわけだし。
その仕事で食ってることくらいわかってるわ」
周は頷いた。
「お手伝いさんもたくさんいるし
あんたみたいな多くの陰陽師や祈祷師が居るし
すごくその手の力の強い家系だし
その娘のあたしがとっても大事にされてるってゆーのくらい知ってるけど?」