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贄姫
第3章 参
「…き…椿…!」
誰かが呼ぶ声がした。
周の声だろうか。
精悍な響きは、真っ直ぐな性格そのもの。
まどろみから抜けられず椿はその声に抗った。
「椿! 椿ってば!」
「わあ!」
揺り起こされて、椿は驚いて飛び起きた。
見れば、それこそびっくり、そして顔をしかめている周の顔がすぐそこにあった。
「なんだ、周か…。夢かと思った」
また布団に戻ろうとする椿を
周が容赦なく抱き起こして阻止した。
「ちょっと! まだ眠いわ」
「ばか。学校行かないのか?
2週間も休んでるんだぞ」
それに椿はぐずった。
「今日は行きたくない」
「わがまま言うな。もう高2なんだから」
身体ごとそっぽを向いてまた布団に戻ろうとする彼女を
周が抱き起す。
「やだ、放してってば!」
振り回す手を抑えられて、そして周が椿を見て目を見開いた。
「椿、その首……」
昨日の瓊乱になじられた跡と思い、椿は急に恥ずかしくなって
周の手を振りほどいた。
「な! 隠すな、よく見せろ!」