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贄姫
第3章 参


肩を引っ張られると、するりと着物が脱げた。
それもそのはず。
昨晩天狗にむしりとられて、帯は破けたまま、どこかへ行ってしまった。
椿の真っ白な肩と、その首筋に浮かぶ赤い痕が
まだ太陽の登り切っていない薄暗い部屋で
やけに鮮烈に周の目に映った。


「椿、昨日なにがあったんだ?」


震える肩に着物をかけてから
周は乱れた椿の着物の裾まで
後ろからきれいにきちんと直した。


「言いたくないならいいけど…。
俺は、学校に行くよ」


「いや、行かないで」


「そうも言ってられない。いくらなんでも、休みすぎだ」


「やだ、周が居なきゃ、また変なのに襲われたらどうするの?」


「ここに居れば安全だろう?」


それに、と周は続ける。


「椿の守護者はもう俺じゃなくて、あの鬼だ。あいつを頼れよ」


それは、周からすれば
もう少しお互いを信頼し合えという意味だったのだが
昨日の今日で、椿にはそう受け取れなかった。


「見捨てるの!?」


「誰が見捨てるかよ!」


「だってい、今っ…!」


「落ち着けって!」


抱きしめて心臓に頭を押し付けると
しばらくして椿は落ち着いたように息を吐いた。
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