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贄姫
第3章 参


「ん、うぅ……ん!」


もがこうとしたが、足は固定されている。
自分が絶望的な状態であることに気付いた。
全力で嫌がったが、それがあだとなった。


「ほう、嫌がると……さらに甘い匂いが」


もみしだいていた手を止め、胸を掬い上げるようにすると
強く吸い付いてきた。


「……!」


嫌、という言葉は、くぐもって発せられない。
その時、実体化した千代菊が
田上めがけて、刀を振り下ろした。


『椿様!』


田上は千代菊の攻撃に一瞬ひるみ、そしてすぐに千代菊の刀をつかんだ。
その力に抗うように千代菊が必死に刀を構える。
ぶるぶると千代菊の腕が震えた。


力ではかなわない。
そう椿が思ったとき、千代菊が力任せに入り口へ飛ばされた。
その千代菊に向かって、「周を呼んで!」と叫ぶ。
声は、声にならなかった。
だが、千代菊が
『御意!』
と散ったのを見て、椿はあともう少しの辛抱だと言い聞かせた。


「くそ、邪魔が入りやがって……」


田上は千代菊に邪魔されたことに怒りを露わにしながら
戻ってこないことを確かめると
舌なめずりをしてまたもや椿に向かってきた。
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