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忘れられない指
第10章 選んだのは・・
ポットででてきた紅茶をゆっくりと楽しみ、
お互いのタルトをつつきあって、大きさが半分くらいになったところで話を切り出した。

「凌空さん・・あの、返事なんだけど・・」

ガチャガチャと食器が鳴る音、ザワザワとした話し声に紛れて聞き取りづらかったのか、
凌空が顔を近づけてきた。

「こんな私ですが・・
 よろしくお願いします」

その瞬間も、店の中には音があふれかえっていたけど、凌空はしっかりと聞き取った。
見てるこっちが恥ずかしくなるくらい、顔中の表情筋を使って笑顔を作った。
その後凌空はなんて言うだろうって、黙って見つめていたらたった一言、
ありがとうって言っただけだった。
もしかしたらそれを言うのが精いっぱいだったんじゃないかな。
だって、眼がウルウルしてたもん・・

私もホッと息を抜いた。
やっと気持ちが落ち着いた。

2年ぶりにできた彼氏にさっそく甘えた声でねだる。

「ねぇ、タルト取り換えっこしよ!」

自分の皿を押しやり、その皿にかけた私の手にすかさず手を重ねてきた。
あったかくて大きな手が私の手を包み込んだ。

その手を見つめながら、思う。

この指は・・どんなふうに・・・
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