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忘れられない指
第10章 選んだのは・・
「そうだよぉ、まだ付き合うだけなんだからさぁ、
 先のことはまだ何も・・」

わからない・・と言いそうになった。
慌てて言葉をのみこんだ。

「そうね、そうだよね。まずはお付き合いしてみないと。
 そこから判ってくるわけだからね、自分の伴侶になりうるかどうか。
 咲子ちゃん、しっかりと見るんだよ、凌空くんのこと。
 なんかあったらいつでも僕に言うんだよ、僕は父親代わりなんだからね」

さすが大人の男は言うことが違う、と褒めると
おだてられた慎介さんは

「よぉし!乾杯しよう!みんなビールでいいよね?これは僕からのおごり!」

そう言って次々グラスにビールを注ぐ。
5人のグラスが重なるとにぎやかなガラスの音と白い泡がはじけた。


今夜は飲むぞぉ!の凌空の掛け声がお客を呼んだかのように
店には客が増えていった。
まるで私たちの幸せが連鎖していったみたいに、笑い声と笑顔があふれだす。
バーとは思えないほど、騒々しい夜になった。
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