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忘れられない指
第10章 選んだのは・・
まっすぐ前を向いたまま、外灯のオレンジだけが目に映る。
孝明からの声に耳を澄ます。

「もちろん・・大切な友達だよ・・」

短くて、模範的な言葉だった。
聞いて私は悪態をつきたくなった。

「付き合うだけなんだからさ、先のことはわかんないよ・・どうなるか・・」

拗ねた声は孝明の耳に届いていたはずなのに彼からは何も返ってこなかった。



街灯をあと一つ越えればアパートに着く。
今夜からはもう、部屋に寄って、とは言えない。
先はわからなくても裏切るような事はしてはいけない・・

アパートの階段下で孝明にちょこんと頭を下げた。

「ありがとね、おやすみなさい」

「おやすみ」

階段を上り終え、いないだろうとわかっていても階段下を見てしまう。
そこには・・

孝明が立っていた。
以前のように、私が2階に上がり終えるまで見届けてくれていた。

なにも・・変わっていないんだ、と実感した。

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