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忘れられない指
第16章 祝福の裏で
その夜はなかなか眠れなかった。
理由はわかっている。
孝明のあの眼が頭から離れないからだ。
感動した顔をしながら、それとは違う色をした涙を流していた・・
私にはそう思えてならなかった。
自惚れかもしれない。いや、自惚れだろう。でも・・
おかげでよみがえってしまった。
孝明の指が思い出されてしまった。
2度の夜が鮮明に瞼の裏に映し出されてしまった・・
私は凌空を選んだ。
孝明を選ばなかった。けど、
孝明への想いを残らず消すことはできなかったんだ、と今頃になって気づかされた。
・・もうどうにもできないよ・・
寝返りを打って凌空に背を向ける。
安らかな寝息を聞きながら
他の男が心の中にいることを謝った。