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忘れられない指
第19章 突然の・・
閉店時間まで居座った私たちは
いつものように店の前で二手に分かれた。
凌空たちに背を向け孝明と2人で歩く。
もう寄りかかることも支えられることもない。
自分の足でしっかりと歩きながら、
一線を越え、さらにその線をも超えた孝明と、並んで歩く。
「しばらくは寂しいけど、あっという間だよきっと。体に気をつけてね」
「ありがとう、咲ちゃんも元気で」
「結婚式、帰ってこられることを祈ってる」
「ああ、なんとか頑張るから」
短い言葉のやり取りだけで、あとは黙ったまま歩き続けた。
アパートの前で、いつものように別れる。
階段を上がりきるまで孝明は見ていてくれた。
2階から手を振る私に手を振りかえす孝明の姿が、霞がかって見える。
涙はもう止められない。
でも大丈夫。
孝明からは見えないから。
おやすみ、とかすかな声を残し、孝明は背を向けた。
その後ろ姿にむかって私は声をかけた。
・・必ずここに帰ってきてね、待ってるから・・