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忘れられない指
第20章 思い出をかかえて
大原咲子になって2度目の春を迎えた。

月日の流れの早さを感じているのは結婚生活だけではない。

孝明が赴任先のバンコクから帰ってくるというのもまた
時の流れの早さを感じさせた。


約束通り、彼はまたこの町に住むことになった。

私たち夫婦は以前凌空の住んでいたところからもう少し住宅街に入ったところ。
孝明は駅向こうの、BARシークレット側に新しい住まいを借りた。

史彦は、私たちから遅れること半年、
付き合って間もない彼女と結婚し、隣駅の駅前マンションを買った。
ほんの少し距離ができてしまったが、
隣駅までがんばれば歩けるくらいの距離なので
今までと変わることなくシークレットに通ってきている。

そう、私たちはずっと変わらず
BARシークレットというもう一つの家で、
家族同然の友だちを待っていたのだ。

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