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忘れられない指
第6章 先が見えない・・
ゆっくり歩いたつもりなのに、もうアパートの前まで来てしまった。
階段の下で、いつものように立ち止って、
私が2階に上がるまで見ていてくれると思ったのに、
じゃあ、と手をあげて立ち去ろうとしている。
「ねぇ・・もう行っちゃうの?」
できれば手を取って、一緒に部屋に入ってほしい。
それが無理ならせめてキスくらい・・
行きかけた孝明は、戻ってくれた。だけど・・
私の髪をゆっくりと撫でただけだった。
おやすみ・・
かすれるような声を残しただけで、再び背中を向けて歩き出した。
私は・・
力なくその後ろ姿を見つめていた・・