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忘れられない指
第8章 確かめたい、互いの心・・
今夜はちゃんと孝明を見送る。

10時半。もう今夜はシークレットに行くのをやめた、と孝明は笑った。

「ここで十分、おなかは満たされたからね」

「えー?そこを満足する?」

口をとがらせながらも、今までと変わらないことを、心底喜んだ。
外まで見送りに出ると言うと、ここでいいから、と靴を履きながら私を制した。

「凌空のこと、ちゃんと考えてやってね」

「うん・・」

「・・咲ちゃん・・」

「・・なに?」

「・・ありがとう」

そのありがとう、はどんな意味のありがとうなの?って聞きたかった。
けど、これ以上は言わない方がいいのだろうと察して、ただうなずくだけにした。
どんな意味であれ、私にありがとうを伝えたいのだろうから・・

「じゃあ、おやすみ」

静かにドアが閉まる。
孝明の気配がなくなった途端に、涙がこぼれた。

それでもまだ、自分の気持ちが、
孝明に対する気持ちが、はっきりしなかった。

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