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Love Emotion
第5章 命の終わり
*
全ての記録を書き終えたのは、十時を少し過ぎた頃だった。
定時はとっくに過ぎたが、当然残業と認められるわけがない。
「三崎さん終わりました?」
とっくに記録を終え、パソコンで看護計画を入力していた前田さんが、疲れきった表情で訊いてきた。
「はい、終わりました。前田さんはまだ残るんですか?」
平山さんは定時で帰ったが、前田さんは三十分以上パソコンに向かっている。
「もうすぐ終わるんで大丈夫です」
声の調子から、気を遣っているわけではなく本当にもうすぐ作業が終わりそうなことがわかり、私は先に帰ることにした。
「じゃあ、お先に失礼します」
「お疲れさまでしたー」
病棟を出て、更衣室で汗臭いユニフォームから私服に着替えると、少しだけ緊張が解ける気がする。
だが、同時に疲れも一斉に体を襲ってきた。
眠くて、怠い。
(……早く帰って寝よう……)
鞄を抱え、病院を出た私は自宅を目指した。