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先生、早く縛って
第24章 愛の才能
……久しぶりに間近で見た翠先輩は、少しほっそりしてさらに美しくなっていた。
俺を責める訳でも、かといって赦す訳でもないのに俺の勝手な願いを聞いてくれたのは……プライドの高さもあるだろうか。
どちらにしても、俺は感謝の気持ちでいっぱいだった。
「私にこんなお願い事してくるなんて……本当に変な人ね。ここまで頭がおかしいと思わなかったわ」
そう言って、入り口近くの書棚にカチンと鍵を置く。
「こうやって鍵を置いて……貴方が私に言った事、憶えてる?」
「あ……」
「私はもう……忘れたわ。じゃあね」
スカートを翻して書庫を後にする翠先輩の退場の仕方は、颯爽と……といった表現がぴったりだった。
俺は心の中で頭を下げた。
もうすぐ卒業式だ……彼女に会うことはもうないのだろう。