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先生、早く縛って
第37章 重なる想い
「えっ? 知っていたんですか?」
「何かがあったらしいということは神谷から聞いた。俺がもっと早く気づくべきだったよ」
「あとあの日のことも……自分が許せなくて……」
汚い、と……自分自身のことをそう言って、泣いていた結衣の姿が蘇る。
見ると、結衣もあの夜のことを思い出したのか身を硬くしていた。
「いいよ……もういいんだ。一緒にいればもう大丈夫だから」
結衣は俺の胸に黙って顔をうずめた。
くねくねと曲がった山道に揺られて、また眠気が襲ってきたのだろうか。
結衣は安心しきった顔でそっと目を閉じる。
谷を抜け、バスは葡萄畑の中を進んでいく。そして何もない草原の中に牛や馬が歩いているのがポツポツと見えて来た。俺の住む町はもうすぐそこだった。