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秘蜜に濡れて
第12章 曖昧な予感
フロアの音が遠く聞こえる。

トイレの一室、竜の陰茎を喉奥まで咥え込んだ真っ赤な唇。

じゅぷじゅぷと厭らしい音を立てながら、口の端から涎を垂らしながら、一心不乱に舐め上げる。

蔑んだ眼で女を見つめる。

「っん、りゅ…う…気持ちい…?」

鼻に掛かった声で甘えてくる女。

竜の眼には女は…



あいりだった。

『竜、気持ちいい?』

耳に届くのはあいりの声色。

さっきまで、撥春の隣で座って笑っていたその人。

この想いは何時からだったのだろう。

圭吾から聞いていた。

今度のCMで仕事を共にするけれど、この業界には似つかわしくない素朴な子だと。

そしてパーティーで見たあいりはまさに圭吾が言う通り、誰よりも浮いていた。

華やかなその場で1人窓辺に佇むあいり。

話し掛けられても、控えめにぎこちない笑顔で対応して、気疲れにロンググラスを傾けた。

時計を探して辺りを見回し、見つからずに俯く。

有名人に見向きもせずただそこにいるあいりは、別の意味で目立っていた。


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