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秘蜜に濡れて
第6章 絡まる糸
迷路の様な廊下を歩きながら、スタジオへ向かう二人。

あいりの首にはスタッフパスが下がっていた。

「リハは終わったんですが、スタジオで待ってて貰えますか?」

「はい」

案内されたスタジオはざわざわと忙しない雰囲気で、トートバックを手にして一番隅っこに立ち尽くしていた。

大勢のスタッフが行き交い、キラキラしたタレントやアーティストがそこかしこに存在していた。

仕事柄全く接点が無いわけでもないのに、やはりこういう世界は気後れしてしまう。

お腹が鳴ったのに気づきスタジオを出ると、二階と11階にカフェがある事を知る。

エレベーターに乗ると上昇した。

カフェでサンドイッチとカフェオレを頼むと腹ごしらえを始める。

満たされたお腹で辺りを見回すと、男の人が一人座っていた。

がっしりしているのにスラリとしていて、皮のジャケットにも嫌味がない。

サングラスをしている為、表情まではわからなかった。

が。

「大丈夫?」

低く落ち着いた声色であいりを心配していた。

何故か。

あいりの瞳から涙が溢れ落ちていたから。
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