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カノジョ
第8章 あんなカノジョ《再々》
 
 僅かに息が切れてきた所で、ベンチに腰を下ろす。

 穏やかな風が、健康的に火照った体を撫で付けていく。

 広々とした芝生広場に濃緑の木々が映える。

 遠目に杏子の自宅マンションも見えている。

「ふぅ……」

 だらしなく四肢を伸ばして、全身に早朝の外気を浴びる。

 物静かな中でも、木々の葉が揺れる音や鳥の囀りが流れてくる。

 爽やかな解放感に一つ息を吐き出すと、雰囲気に身を委ねていた。

 時折、犬を連れた初老の男性が通り掛かる。

 だらしなくベンチに座る杏子を一瞥しただけで、犬に引っ張られるように去って行く。

「どっちが散歩させられているのか…分からないよなぁ……」

 バタバタと去って行く後ろ姿に苦笑を浮かべながら見送る。

 すっかり微睡んだ雰囲気を醸し出している杏子。

 呼吸もとうに落ち着いた時だった。

「……んっ……」

 温まっていた体が冷えてきた事で、ブルッと体が震えて辺りを見回した。
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