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カノジョ
第3章 そんなカノジョ
「久し振りだけど……ホント…何も無いトコだよなぁ……」
明るい陽射しの元に立つ男の口から思わず言葉が洩れる。
駅前だと言うのに、タクシーは疎か、人影の一つも見当たらない。
当然の事ながら、街灯も無ければ聳え立つ建物すら見当たらない駅前。
「まぁ、こんな無人駅の駅前じゃ、誰も商売なんてしようと思わないか……」
思わず苦笑を洩らす男は小鳥の囀【サエズ】りを耳にしながら、駅前から延びる畑に挟まれた未舗装の道路を歩み始めた。
歩き始めた当初は、男は懐かしさに辺りを見回しては景色を楽しんでいた。
しかし、歩けど誰とも擦れ違わない田舎っぷりに、徐々に飽きを覚え始めていた。
「……こんなにど田舎だったっけ……」
幼少期に走り回って楽しんでいた思い出すら、怪しく覚えていた時だった。
「おーいっ」
遥か遠方から届いてくる高い声。
キョロキョロと辺りを見回せど男以外に人影は無い事から、その声は男に向かって掛けられた物だと分かる。
声の方へと視線を向ければ、徐々に大きくなってくる人影が男の視界に映る。
漸く、第一村人を発見した男。
足を止めて佇んで居ると、その人影は更に大きくなり、それにつれて男の目も徐々に見開かれていった。
「久し振りよねぇ」