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鈴(REI)~その先にあるものは~
第6章 終章~悠遠~
もしかしたら、あの夜、この鈴を鳴らしたたのは、お香代だったのだろうか。
―お香代ちゃん、私の生命を助けてくれて、ありがとう。
お亀は心の中で亡き友に礼を言うと、紅い紐のついた鈴をそっと墓石の上に置いた。
やはり、この鈴は、この場所に返すのが、お香代に返すのがふさわしいような気がする。
「そろそろ参ろうか」
小五郎が言うと、お亀は頷いた。
杖を持ったお亀の前に大きな手のひらが差し出される。お亀はその手を握った。
もう二度と放さない。
これから小五郎とお亀は、この国ではないどこか別の国で生きてゆかねばならない。
多分、生まれ故郷のこの国に戻ってくることは二度とないだろう。
それでも良い。心から愛した男と共にゆけるのなら、たとえどこにだってついて行く。
二人はゆっくりと歩き出し、やがてその姿は森の奥へと吸い込まれ、見えなくなった。
樹々の間を風が駆け抜けた。
野苺の茂みが音を立てて揺れ、石の上の鈴が小さく震え、涼やかな音色を立てた。
―お香代ちゃん、私の生命を助けてくれて、ありがとう。
お亀は心の中で亡き友に礼を言うと、紅い紐のついた鈴をそっと墓石の上に置いた。
やはり、この鈴は、この場所に返すのが、お香代に返すのがふさわしいような気がする。
「そろそろ参ろうか」
小五郎が言うと、お亀は頷いた。
杖を持ったお亀の前に大きな手のひらが差し出される。お亀はその手を握った。
もう二度と放さない。
これから小五郎とお亀は、この国ではないどこか別の国で生きてゆかねばならない。
多分、生まれ故郷のこの国に戻ってくることは二度とないだろう。
それでも良い。心から愛した男と共にゆけるのなら、たとえどこにだってついて行く。
二人はゆっくりと歩き出し、やがてその姿は森の奥へと吸い込まれ、見えなくなった。
樹々の間を風が駆け抜けた。
野苺の茂みが音を立てて揺れ、石の上の鈴が小さく震え、涼やかな音色を立てた。