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鈴(REI)~その先にあるものは~
第6章 終章~悠遠~
大切な人の子であれば、お亀もまた大切に育てたい。嘉利を愛せなかった分まで、愛情を込めて嘉利の血を分けたこの子を育てたかった。
実の父に伯父子と呼ばれ、冷たい眼で見られた嘉利は、長じて殺戮を好み畜生公と呼ばれる悪名高き藩主となった。
そのような悲劇を、もう二度と繰り返さぬためにも。この子は両親の愛情を惜しみなく与えて、人の温もりの中で育てたい。この子の父のけして知り得なかった優しさや温もりを教えてやりたかった。
今となっては、嘉利の子を授かったのもやはり運命なのだと思える。この子を立派な人間に育て、教え導くことこそが嘉利へのせめてもの詫び、いや、真心だろう。
小五郎に胸の想いを話すと、小五郎は笑って頷いた。
―そうだな、愛され慈しまれ大切に育てられた子は、また、その中で自ずと人の愛や優しさを知るものだ。それゆえ、我らはこの子を大事に育てよう。この子もまた長じて、人を愛せる人となるように。
そう力強く言ってくれた小五郎の言葉が今は何より頼もしい。
お亀は、あの時、小五郎がくれた言葉を改めて思い出していた。
愛され慈しまれ大切に育てられた子は、また、その中で自ずと人の愛や優しさを知るものだ。
その言葉を頼りに、これからはこの男と歩いていってみようと決めた。やがて生まれくる子どもと三人で新しい家族を作るのだ。
お亀は懐からお香代の形見の鈴を取り出す。木檜城でお亀が嘉利に首を絞められようとしていたその時、この鈴が突如鳴り出し、お亀の危機を救ってくれたのだ。
あの時、この小さな鈴が起こしたのは、まさに奇蹟としか言いようがなかった。お亀には嘉利が視たというお香代は見えなかったけれど、最初は小さかったこの鈴の音がやがて幾千もの鈴が同時に鳴り響いているような大音響に変わったのは確かにこの耳で聞いた。
実の父に伯父子と呼ばれ、冷たい眼で見られた嘉利は、長じて殺戮を好み畜生公と呼ばれる悪名高き藩主となった。
そのような悲劇を、もう二度と繰り返さぬためにも。この子は両親の愛情を惜しみなく与えて、人の温もりの中で育てたい。この子の父のけして知り得なかった優しさや温もりを教えてやりたかった。
今となっては、嘉利の子を授かったのもやはり運命なのだと思える。この子を立派な人間に育て、教え導くことこそが嘉利へのせめてもの詫び、いや、真心だろう。
小五郎に胸の想いを話すと、小五郎は笑って頷いた。
―そうだな、愛され慈しまれ大切に育てられた子は、また、その中で自ずと人の愛や優しさを知るものだ。それゆえ、我らはこの子を大事に育てよう。この子もまた長じて、人を愛せる人となるように。
そう力強く言ってくれた小五郎の言葉が今は何より頼もしい。
お亀は、あの時、小五郎がくれた言葉を改めて思い出していた。
愛され慈しまれ大切に育てられた子は、また、その中で自ずと人の愛や優しさを知るものだ。
その言葉を頼りに、これからはこの男と歩いていってみようと決めた。やがて生まれくる子どもと三人で新しい家族を作るのだ。
お亀は懐からお香代の形見の鈴を取り出す。木檜城でお亀が嘉利に首を絞められようとしていたその時、この鈴が突如鳴り出し、お亀の危機を救ってくれたのだ。
あの時、この小さな鈴が起こしたのは、まさに奇蹟としか言いようがなかった。お亀には嘉利が視たというお香代は見えなかったけれど、最初は小さかったこの鈴の音がやがて幾千もの鈴が同時に鳴り響いているような大音響に変わったのは確かにこの耳で聞いた。