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鈴(REI)~その先にあるものは~
第1章 序章~萌黄の風~
 何より、秘められた奥の狭間―これまでは良人小五郎しか触れることのなかった場所が烈しい痛みを訴えている。それらは何より、我が身が名も知らぬゆきずりの男たちに寄ってたかって陵辱された証である。
 一体、小五郎に何と申し開きをすれば良いのだろう。こんな穢れ切った身体を、自分を小五郎はこれまでと変わらず妻として受け容れてくれるだろうか。
 お香代の眼に、新たな涙が湧く。
 男たちに犯されている間中、猿轡をされていたので、助けを求めるどころか悲鳴さえ上げられなかった。が、涙がとめどなく溢れ続け、泣きすぎて眼は赤く腫れ上がってしまっている。
 あれだけ泣いても、まだ流す涙が残っているのかと自分でも面妖なことに思いながら、お香代はのろのろと歩いた。
 最早、地面に転がっている駕籠や野苺のことなぞ眼中にも入らない。
 覚束ない脚取りで歩くお香代の頼りなげな後ろ姿を、蜜色の夕陽が赤く照らし出していた。


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