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鈴(REI)~その先にあるものは~
第2章 友の悲劇~無明~
 母が亡くなった時、お亀は十六だった。父の跡を継いで村長となった従兄から嫁にこないかと誘われはしたものの、その求婚は断った。従兄は十歳年上で優しくて真面目な男だが、何しろ、あまりに昔から知りすぎていて、今更良人として見ることはできそうにもないと思ったからだ。
 そんなわけで、お亀は現在、かつては両親や幾人かの奉公人と暮らした比較的広い家に一人で起居している。ただっ広い家に使用人の一人も置かず、時に淋しさを感じないこともなかったけれど、気楽といえば気楽な暮らしであった。
 屋敷―というほどでもないが、とりあえず村ではいちばん大きな家だ―の裏にはささやかな庭があり、井戸もある。その井戸端にふた色の椿が並んで植わっており、白色の方は流石にもう花は終わったらしいが、紅色はまだ時折、花をつけることがあるのだ。
 この二本の樹を見る度、お亀は亡き両親や、離れて暮らす友のことを思うのだった。母はお世辞にも美人とは言い難い女性だった。父にしても、いかつい将棋の駒のような顔をした人で、この二人のどちらに似ても、お亀が器量の点で引け目を感じるようにならざるを得なかったのは明白だ。
 贔屓目に見ても並、辛く点をつければ、どう見ても哀しいかな、並よりは下というのがお亀の容貌だ。唯一の自慢は、父から譲り受けた黒々とした髪と、母に似た肌理の濃やかな白い膚だが、膚の美しさとて、竜胆の花びらを清らかな水に落とした風情のようなお香代の美しさに比べれば、はるかに及ばない。
 要するに、他にあまりにも取り柄がないため、強いて探せば、そこが良いという程度のものである。
 母が十九の歳になるまで嫁にいかなかったのも、その器量のせいには違いなく、やや婚期を逸しかけた頃になって漸く、仲立ちをしてくれる人があって、遠く離れた小さな村の村長に嫁いだ。
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