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桜
第1章 さくら
〜さくらside〜
都内でOLをしていた私は居酒屋の階段から落ちて、幕末の時代にタイムスリップしてきてしまった。
最初は戸惑っていたけれど、後輩の篠宮くんもいるし、呉服屋のユキちゃんや四季のおかみさんがよくしてくれているおかげで、ここでの生活もだいぶ慣れてきた。
今日も食事処四季で元気に働く。
着物の袖を紐でたすき掛けにし、机の上を手際良く拭いていく。
今日も店の入り口から何人かの客が入ってくる。
「いらっしゃいませ!」
その度に私は元気に笑顔でお客さんを迎え入れる。
「さくらちゃん、すっかり四季の看板娘になったねぇ!さくらちゃんに会いたくて来てる客もたくさんいると思うよ」
馴染みの客もだいぶ増え、そんなことまで言ってくれるのだ。
お客さんを相手に談笑してると、ふいに入り口から土方さんが顔を覗かせる。
「あっ…」
途端に私の顔は赤くなり、鋭いお客さんには私と土方さんの関係は気付かれていると思う。 何度も会っていても今だに恥ずかしくなってしまう。現代でアイドルや俳優さんなどカッコイイ人を何人も見てきたが、それでも土方さんはその人たちに負けず劣らずカッコイイのだ。
「す、すぐお茶をお持ちしますね」
慌てて台所へお茶を取りに行こうとすると、
「いや、今日は様子を見に来ただけだ。」
「あ…そうなんですか」
と、私がしょんぼりしていると、土方さんはふいに私の耳の近くに唇を寄せた。
…ドキッ
「今夜は屯所に来いよ。待ってる」
耳元で低く艶めいた声を出され、耳まで熱くなる。
新撰組副長としては絶対に他の人の前では出さないような声だ。それを私にだけ聞かせてくれていると思うと胸の奥がキュッと締め付けられるような気がする。
「…はい。」
私の答えを聞くと、土方さんはすぐに出て行ってしまった。
夜の予定を思うと少し浮き足立ちながら仕事に戻った。
ーー…
店を閉めると外は薄暗くなっていた。
夜の街は危険だ。小走りで屯所に向かおうとすると、店のすぐそばで呼び止められた。
「さくらさん。」
あ…この方は、新撰組監察方の山崎さんだ。
土方さんが迎えに来れない時や、伝言がある時には、こうして四季まで来てくれるのだ。
「山崎さん、こんばんは」
「副長が忙しいので迎えに来た。」
「ありがとうございます。」
都内でOLをしていた私は居酒屋の階段から落ちて、幕末の時代にタイムスリップしてきてしまった。
最初は戸惑っていたけれど、後輩の篠宮くんもいるし、呉服屋のユキちゃんや四季のおかみさんがよくしてくれているおかげで、ここでの生活もだいぶ慣れてきた。
今日も食事処四季で元気に働く。
着物の袖を紐でたすき掛けにし、机の上を手際良く拭いていく。
今日も店の入り口から何人かの客が入ってくる。
「いらっしゃいませ!」
その度に私は元気に笑顔でお客さんを迎え入れる。
「さくらちゃん、すっかり四季の看板娘になったねぇ!さくらちゃんに会いたくて来てる客もたくさんいると思うよ」
馴染みの客もだいぶ増え、そんなことまで言ってくれるのだ。
お客さんを相手に談笑してると、ふいに入り口から土方さんが顔を覗かせる。
「あっ…」
途端に私の顔は赤くなり、鋭いお客さんには私と土方さんの関係は気付かれていると思う。 何度も会っていても今だに恥ずかしくなってしまう。現代でアイドルや俳優さんなどカッコイイ人を何人も見てきたが、それでも土方さんはその人たちに負けず劣らずカッコイイのだ。
「す、すぐお茶をお持ちしますね」
慌てて台所へお茶を取りに行こうとすると、
「いや、今日は様子を見に来ただけだ。」
「あ…そうなんですか」
と、私がしょんぼりしていると、土方さんはふいに私の耳の近くに唇を寄せた。
…ドキッ
「今夜は屯所に来いよ。待ってる」
耳元で低く艶めいた声を出され、耳まで熱くなる。
新撰組副長としては絶対に他の人の前では出さないような声だ。それを私にだけ聞かせてくれていると思うと胸の奥がキュッと締め付けられるような気がする。
「…はい。」
私の答えを聞くと、土方さんはすぐに出て行ってしまった。
夜の予定を思うと少し浮き足立ちながら仕事に戻った。
ーー…
店を閉めると外は薄暗くなっていた。
夜の街は危険だ。小走りで屯所に向かおうとすると、店のすぐそばで呼び止められた。
「さくらさん。」
あ…この方は、新撰組監察方の山崎さんだ。
土方さんが迎えに来れない時や、伝言がある時には、こうして四季まで来てくれるのだ。
「山崎さん、こんばんは」
「副長が忙しいので迎えに来た。」
「ありがとうございます。」