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Love adventure
第15章 夫の帰国②
「実は今日、ほなみさんに頼みたい仕事の話しがありまして……で、このふたりも東京からやって来たわけなんです。
帰国されてご夫婦水入らずのところ申し訳ありませんが、ちょっとだけ、ほなみさんをお借りしてもいいですか?」
「?」
ほなみにも初耳の話だった。
浜田がしきりに目配せをしているのに気付き、ほなみは慌てて頷いてみせた。
智也は特に不審な顔もせず、腕時計をチラッと見る。
「構いませんよ。妻が皆様にご協力出来る事があるなら使ってやって下さい。
ほなみ……俺は今から実家へ顔を出してくるから、ゆっくりしておいで」
智也は、皆に会釈するとコートを翻し、駅方面に向かい歩いて行った。
ほなみは、張り付いたような笑顔で手を振る。智也の姿が見えなくなり手を降ろすと、一気に膝の力が抜けてよろめいた。
「大丈夫?」
亮介に抱き留められる。
「……はい。大丈夫……貧血かな……ごめんなさい」
自分で立とうとするが手足に力が入らない。
よく考えたら、家に何も食べ物が無くて朝から口にしたのは水だけだ。
亮介は心配そうにほなみを見た。三広も側で立ち尽くしている。
「ほなみちゃん、お花を落としたよ?」
浜田が、青バラの花束を拾い差し出した。
「あ、すいませ……」
青い色が目に入ると、途端に全身を寒気が襲う。
「……顔色が……」
皆がほなみの顔を覗き込む。
ほなみは、頭の奥深くで、これからやってくるであろう、フラッシュバックを予感していた。
身体が冷たくなり、目の前が段々と暗くなっていく――
そう、バラの青い色は、中学生の時に見た、自動車事故に遭い運ばれた病院のベッドに横たわっていた両親の血の気の引いた手の色を思い出させた。
『――ほなみさん。手を握ってあげなさい――』
智也の父が言ったが、変わり果てた両親を直視出来ずその青い手にも触れなかった――
「……嫌……怖い……怖い……」
ほなみは小さく呟くと、意識を失ってしまった。
帰国されてご夫婦水入らずのところ申し訳ありませんが、ちょっとだけ、ほなみさんをお借りしてもいいですか?」
「?」
ほなみにも初耳の話だった。
浜田がしきりに目配せをしているのに気付き、ほなみは慌てて頷いてみせた。
智也は特に不審な顔もせず、腕時計をチラッと見る。
「構いませんよ。妻が皆様にご協力出来る事があるなら使ってやって下さい。
ほなみ……俺は今から実家へ顔を出してくるから、ゆっくりしておいで」
智也は、皆に会釈するとコートを翻し、駅方面に向かい歩いて行った。
ほなみは、張り付いたような笑顔で手を振る。智也の姿が見えなくなり手を降ろすと、一気に膝の力が抜けてよろめいた。
「大丈夫?」
亮介に抱き留められる。
「……はい。大丈夫……貧血かな……ごめんなさい」
自分で立とうとするが手足に力が入らない。
よく考えたら、家に何も食べ物が無くて朝から口にしたのは水だけだ。
亮介は心配そうにほなみを見た。三広も側で立ち尽くしている。
「ほなみちゃん、お花を落としたよ?」
浜田が、青バラの花束を拾い差し出した。
「あ、すいませ……」
青い色が目に入ると、途端に全身を寒気が襲う。
「……顔色が……」
皆がほなみの顔を覗き込む。
ほなみは、頭の奥深くで、これからやってくるであろう、フラッシュバックを予感していた。
身体が冷たくなり、目の前が段々と暗くなっていく――
そう、バラの青い色は、中学生の時に見た、自動車事故に遭い運ばれた病院のベッドに横たわっていた両親の血の気の引いた手の色を思い出させた。
『――ほなみさん。手を握ってあげなさい――』
智也の父が言ったが、変わり果てた両親を直視出来ずその青い手にも触れなかった――
「……嫌……怖い……怖い……」
ほなみは小さく呟くと、意識を失ってしまった。