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Love adventure
第16章 マカロン①
「凄く勝手なお願いだけど……バンドのリーダーとして、祐樹の友人としての、俺からの頼み、考えてくれないかな?」

 三広は切ない眼差しをほなみに向ける。その目を見て、ほなみの脳裏には、別れ際の西本の悲しい瞳が鮮やかに蘇った。

「駄目だよ……迷惑に決まってる……」
「そんな事ないよ!良くなるのに時間がかかるかもしれないけれど、きっと祐樹も」

 ほなみは耐え切れず、嗚咽を漏らした。

「……っ西く……ん……」
「……うっ……困ったな……俺泣かれるのダメ……」

 三広は狼狽えて、グルグルと歩き回っていた。その様子に、ほなみは泣きながら笑ってしまった。

「……ごめんね。一番大変なのは、西君や皆なのに……私が泣いたって何も変わらないよね……ふふ……三広君て優しいね」

 三広は一瞬真顔になり、苦しげに呟いた。

「優しくないよ……祐樹が治らないとクレッシェンドは活動出来ないから、元気を出してもらわないと困るし……それに」

 少し頬を紅く染めて小さな声で何か言ったが、聞き取れない。

「何?」

 三広は手をバタバタと振って真っ赤になる。

「いやっ!何でもない!忘れて!」
「……智也に、暫く東京に行ってもいいか聞いてみる。黙って行く訳にはいかないし……」
「マジで?考えてくれる?」

 頷くと、三広はウサギみたいに跳ねながら狂喜した。
 ほなみは笑って彼を見ていたが、内心は気が重い。
 ――今日は智也がいる――
 考えただけで、胸の中が気まずさで一杯になる。
 上手く事情を説明出来るだろうか?
 その時、楽屋のドアが細く開いていていた事に、ふたりは全く気づかなかった。
 浜田と亮介が、ドアの隙間に顔を挟んで耳をそばだてて居る。

「……三広め。ちゃっかり告白しようとしたな。聞きましたよね今の。
『ほなみちゃんが来てくれたら俺が嬉しいから』……て……うわ――」
「……これは一波乱も二波乱もありそうですねえ……」


 浜田は、ニヤニヤして呟いた。



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