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Love adventure
第16章 マカロン①
『いやああああっ!』

 叫ぶと同時に夢から醒める。目に飛び込んできたのは落書きだらけの壁。そして柔らかく綺麗な茶色い髪。
 ほなみは、三広に抱き締められていた。

「……み、つひろ、君……?」
「ごめんっ!うなされてたから……ついっ」

 三広は慌ててほなみを離すが、勢いで後ろにつんのめり頭から床に落ちた。

「三広君っ!」
「いってえー!」

 三広はうずくまり頭を抱えた。
 ソファから降りて彼の頭を触ってみると、彼の小柄な身体がビクンと動き、大きな瞳がほなみを見つめた。

「……三広君てよく転ぶの?この間はぶつかってたし……」

 小さな形の良い頭を点検するように触れてみたら、瘤が出来ていた。
 彼の顔が耳まで赤くなっている事に気づき、ほなみは手を離した。

「しばらく痛むかもしれないね」
「う、うん……」
「私についててくれたの?……ありがとう」
「いや、当たり前だよ!浜田さんも亮介も心配してたし」
「眠ってる時、何か変な事言った?」
「……ううん」
「……そう」
  
 きっと彼は嘘をついている、とほなみは思った。まるで現実のような生々しい夢だった。ほなみを嘲笑う花たちの声が鼓膜の奥に張り付いているよう で、思わず身震いをする。

「今日は、ほなみちゃんに頼みがあって来たんだ。」

 三広が背筋をシャンと伸ばし、真剣な顔になった。
 
「私に……頼み?」
「祐樹の事だけど……」

 その名前を耳にして、身体じゅうが総毛立ってしまう。


「ニュースで知ってるかもだけど……怪我よりも深刻な問題があってさ……」
「……どうしたの?」
「歌おうとすると声が出ないんだ。医者が言うには何かの精神的な要因じゃないかって……」
「!」

 ほなみは口を両手で覆った。

「俺が思うに、祐樹は……ほなみちゃんが居てくれたら良くなるんじゃないかな?あいつ惚れっぽいっていうか遊んでばかりだったけど、ほなみちゃんには違うような気がするんだよ……少しの間だけでも……東京に来て祐樹を元気づけて欲しいんだ……」

 ほなみの唇が小刻みにわななき、涙まで出てきてしまった。

 ――西君。
 あんなに音楽に真摯で素晴らしいピアノを弾いて、人を魅了する声を持っているのに……
 ステージに立つ為に産まれてきた様な人なのに、私のせいでそんな事になっているなんて……!





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