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Love adventure
第22章 答えはないのに
 東京に行く予定の前日、働いていた会社へ向かってみた。
 新聞や郵便物も止めてもらうよう頼んだし、マンションの管理人にも留守を伝えてきた。
 部屋の片付けもバッチリやったし、荷物を纏めたり、身なりを整えるため美容院に行ったり、自分なりの準備は出来上がってしまったので今日は暇なのだ。
 会社には昨年末に挨拶に行ってから全く顔を出していない。
 呼ばれてもいないのに、社長の息子の嫁がいきなり遊びに行っても、仕事の邪魔になるだけかも知れないが。

「モカと……ストロベリーと、チョコを5個ずつ下さい」
「はい、お待ち下さい!」

 近所の『PEACH』という洋菓子店で手土産を買う事にした。
 ほなみは、店員がせっせと箱にマカロンを詰めるのを浮き立つ気持ちで眺めていた。
 浜田に御馳走になって以来、マカロンにすっかりはまってしまった。
 教わったレシピで何回も練習して、昨夜、ようやくストロベリーを作る事に成功した。

『西君にプレゼントしたい』という不純な動機で作ったのだが、彼は今、どうしているのだろうか?
 三広や亮介には、
『ほなみちゃんが側にいれば祐樹も元気になるよ』と言われたが……
  あの夜は情熱的に愛してくれたけど、今は?
 彼はミュージシャンだけあって感情の波が激しいのではないだろうか。勝手な推測だが。
 ひとときのアバンチュールに過ぎない、という事も有り得る。
 ほなみにとっては忘れられない一夜でも、彼は過去の恋の一つとして整理がついていて、東京まで会いに行ったとしても、それこそファンのひとりに接するような儀礼的な態度を取られるのかも知れない。
 想像しただけで切なくなった。

「あの……お客様?大丈夫ですか?」

 店員の女の子がマカロンを箱に詰め終え、心配そうにじっと見ていた。
 ほなみは我にかえり、湿った目元を慌てて手で押さえた。
 知らぬ間に泣きそうになっていたらしい。
 恥ずかしくなり、取って付けた様に笑い、マカロンのついでにショコラオランジェも買ってしまった。




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