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Love adventure
第25章 あなたのもとへと②
 ほなみがあと一歩後ずされば壁だった。
 もう逃げ場はない。
 彼の瞳に、獣の様な輝きが宿っている。
 捕まえられたら、どうなってしまうのかーーそれを望んでいるのか、恐ろしいのかが、自分にも分からない。

(ううん……違う……私は……西君に……抱き締めて欲しい……と望んでいる……
 だから……ここまで来た……)

「……ほなみも俺が心配なのか」

 西本は壁に両手を突き、ほなみを鋭い目で見下ろした。

「し、心配だよ……西君は……たったひとりのクレッシェンドのボーカルなのに……もし……私のせいで……活動出来なくなったら……」
「……そんな心配なんか要らないんだよ!」

 苛立つ叫び声と共に、ほなみは強く抱き締められた。

「あ……んっ」

 背中に彼の腕が絡みつき吐息が耳を掠め、思わず甘く声を漏らしてしまう。

「……これは夢なのか?」

 彼の手が、頬に触れる。微かな震えがほなみの頬に伝わってきた。
 愛おしげに髪を撫でられキスをされて、ほなみの心から切なさが溢れ出していく。

「俺は、夢を見てるのか?……ほなみが腕の中に居る……」

 優しい低音の甘い声は、どこか苦しげだった。
 ほなみが首に腕を回して抱き締め返すと、彼の身体がビクリと動く。

「夢じゃない……私は西君に……会いに来たの」

 西本は腕の力を緩め、涙で瞳を盛り上がらせている彼女に向き合った。
 ふたりの視線が絡み合う。西本の瞳もこぼれそうに潤んでいる。
 
(もう……自分を偽れない……)


「……会いたかったの……」


 ほなみの両目からついに大粒の涙が落ちた時、彼に唇を塞がれた。




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