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Love adventure
第26章 盗み見られた、愛
 三広は、綾波の手から逃れようともがく。
 聞きたくない、見たくないのに、聴覚も視覚も総動員で、暗がりのふたりを探してしまう。
 
「見るのはタダだろ……折角の機会だ。こういう経験もいいだろう」

 三広は、綾波の言葉に反論しようとするが、口を塞いでいた綾波の長い指が唇をなぞり、小さく悲鳴をあげてしまう。
 暗がりのふたりは愛し合うことに夢中で三広の声に気づかない様子だ。

「綾ちゃ……っ何を」
「ふふ……見ているだけで啼くとは……お前も好き者だな」
「ーー!」

 目が慣れて、白い肌が浮かび上がってくる。それがほなみの肌だと解ると、身体の奥が痛いほどに疼いた。
 祐樹がほなみを抱き締めているのが確認できると、やり場のない切ない熱が溢れてくる。

(――俺は、こうなる事を願ってたんだ。それなのに何故こんなに苦しいんだ?)

 自問自答をしながら、正直に反応する身体を持て余す。
 部屋にギシリ、と軋む音が響いた。
 彼等はベッドへと移動したらしい。
 三広の心臓が痛い程に早鐘を打つ。

「西くん……」

 ほなみの、縋るような心細いような、甘い呟きとも溜息とも叫びともつかない、祐樹を呼ぶ声を聴いて、胸がビリビリ割かれるような錯覚をおぼえた。
 ギシ、ギシ、と、軋む音が生み出される度、その時に二人がしている動作を頭に浮かべてしまい、目の奥が潰れそうに締まる。

「……ほなみ……いい?」

 祐樹の、上擦る声。
 ほなみが息を呑むのが気配でわかる。

「……あっ……あっ!」

 この叫びは、先程まで聴こえていた声とは明らかに違う種類のものだ。
 ――ギシギシギシ。
 激しく振動が伝わってくる。

「―――――!」

 三広は、自分の口を塞いでいる綾波の手に思い切り噛み付いた。
 綾波は、すこし顔をしかめて三広を離すとクスリと笑い、寝室のドアを閉めハンカチで手の平の血を拭う。

「綾ちゃんっ……なんで……なんで……こんな事……!何の為にっ!」

 三広は、大きな瞳に大粒の涙を浮かべた。
 その唇は、綾波の手の血で更に紅く染まっている。
 綾波は、噛まれた手を自分の舌で軽くなめ回し、満足げな笑みを口元に浮かべた。

「……言っただろ。お前を虐めてやりたくなったんだよ」

 その返答に言葉を失い三広が蒼白になった瞬間、ほなみは絶頂を迎え、切なく啼いた。




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