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Love adventure
第29章 初恋ーー幼い憧れ

涙を浮かべたヒカルの目には、明らかに俺への敵意が宿っていた。
母親は俺の顔を見て、慌てて曖昧な笑顔を作ってから、ヒカルに向き直る。
「智也君は、沢山練習したから上手になったのよ?ヒカルも、もっと頑張れば……」
と、言い聞かせようとしたが、ヒカルは更に大きな声で泣いた。
「嫌だっ!智也みたいに何でもスラスラできるわけないよっ!」
教室は、ヒカルの次が俺の順番だった。いつも時間前に来ていた俺はヒカルとよく顔を合わせてはいた。だが、ヒカルは俺と目を合わせた事がなかった。
おそらく、最初から嫌われていたのだろう。
それは別にかまわなかったが。
教室の先生も励ましたり宥めたり一所懸命になっていたが一向に泣き止む気配はなかった。
ヒカルはグズグズと泣き続けている。
俺は、馬鹿馬鹿しさが込み上げてきて、ついポロリと言ってしまったのだ。
「――ヒカル。辞めたいなら、辞めればいいんじゃないか」
俺のその言葉に、先生もヒカルも、ヒカルの母親もギョッとしていた。
「僕は、将来の為に習わされているだけだ。ヒカルは自分の意思で習ってるんじゃないの?
僕の方が上達が早いからって勝手にいじけて周りに当たるな」
ヒカルは顔面蒼白になった。母親も先生も、口をあんぐりと開けて俺を見ている。
俺は、楽譜をレッスンバッグにしまい椅子から立ち上がると、彼らの顔を見ずに言った。
「……すいません。頭が痛いので今日は帰ります」
母親は俺の顔を見て、慌てて曖昧な笑顔を作ってから、ヒカルに向き直る。
「智也君は、沢山練習したから上手になったのよ?ヒカルも、もっと頑張れば……」
と、言い聞かせようとしたが、ヒカルは更に大きな声で泣いた。
「嫌だっ!智也みたいに何でもスラスラできるわけないよっ!」
教室は、ヒカルの次が俺の順番だった。いつも時間前に来ていた俺はヒカルとよく顔を合わせてはいた。だが、ヒカルは俺と目を合わせた事がなかった。
おそらく、最初から嫌われていたのだろう。
それは別にかまわなかったが。
教室の先生も励ましたり宥めたり一所懸命になっていたが一向に泣き止む気配はなかった。
ヒカルはグズグズと泣き続けている。
俺は、馬鹿馬鹿しさが込み上げてきて、ついポロリと言ってしまったのだ。
「――ヒカル。辞めたいなら、辞めればいいんじゃないか」
俺のその言葉に、先生もヒカルも、ヒカルの母親もギョッとしていた。
「僕は、将来の為に習わされているだけだ。ヒカルは自分の意思で習ってるんじゃないの?
僕の方が上達が早いからって勝手にいじけて周りに当たるな」
ヒカルは顔面蒼白になった。母親も先生も、口をあんぐりと開けて俺を見ている。
俺は、楽譜をレッスンバッグにしまい椅子から立ち上がると、彼らの顔を見ずに言った。
「……すいません。頭が痛いので今日は帰ります」

