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Love adventure
第29章 初恋ーー幼い憧れ
 先生に会釈をし、教室のドアを開け階段を駆け降りる。
 とにかくこの場から抜け出したかった。
 真っ直ぐ帰る気がしないし遠回りでもしようかーーいや、公園で遊んだりするのも特に好きでもないし……

 "レッスンをさぼった事を後で問い詰められる"
 とも思ったが、そこは適当に言い訳しておけば良いだろう。

 呆然と俺を見つめるヒカルの泣き顔が脳裏に蘇る。

(だから本音なんて言う物じゃない)

 結局俺は父親の会社の庭に立ち寄った。
 広大な敷地内にある植え込みや植木はいつも綺麗に手入れされ、花壇には季節の花が生き生きと育っている。
 大きな公園のように散歩できるような遊歩道が作られていて、池もあった。
 ここには滅多に来ないが、あの日はどういう訳か足が向いてしまったのだ。
 運命だったのだろうーー
 薔薇の門を抜けた先に池がある。
 池の側で、若草色と黄色の中間のような綺麗な色目のワンピースを着た女の子がしゃがんで居るのを見つけた。
 思わぬ先客に(……なんだ。誰かいる……引き返すか)と、踵を返そうとすると、気配を感じたのか不意に女の子が振り返った。
 その澄んだ目に、一瞬見とれてぼんやりしてしまい、手に持っていたレッスンバッグを落とし、中の楽譜が風に舞ってしまった。

「いけない!」

 ひらひらと木の葉のようにあちこちに舞う楽譜を手を伸ばしつかまえたが、一枚は池の中に落ちてしまった。




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