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Love adventure
第29章 初恋ーー幼い憧れ
 俺は、着ていた上着を急いで脱ぎ、その子に羽織らせた。

「ゴメン。服が濡れちゃったね」

 またじっと見つめられる。
 その瞳に吸い込まれそうで、つい息を止めてしまう。

「今は、変な顔じゃないよ」
「?」
「さっきの、ウソの笑顔だったでしょ」

 さらりと言い当てられ、言葉を失っていると、ドカドカという足音が近づいてくる。
 会社の用務員の中野がタオルを手に走ってきた。

「智也君っ!ほなみちゃん!大丈夫かねっ?
 ニ階で会議をしてたら、池で遊んでる君達を見つけた社員が居てねえ。
 ほなみちゃんが池に飛び込んだって聞いて、びっくりしたよ!
 危ない事をしちゃ駄目でしょう!
 智也君!君も、女の子に無茶をさせたらいけないでしょう!んんっ?」

 俺は、角を生やした中野に説教されている間、この子の名前が『ほなみ』であるという事を頭に叩きこんでいた。

「風邪引いたら大変だよ!着替えを用意するからシャワーを浴びなさい!
 あ、智也君もそろそろ帰りなさい。
 社長と奥さんには黙っててあげるから。ねっ!?」

 ほなみは中野に手を引かれ歩き始めたが、振り返って、

「あなた岸智也君?」
と聞いてきて、俺の心臓が跳ね上がった。

「私は、仁科ほなみ。お父さんが岸君の会社で働いてるの。
 新潟から、転勤で引っ越してきたの。学校も一緒だよね。よろしくね」

 ほなみは少し離れた場所からそう言うと、ワンピースの裾を指先でちょこんとつまんで、小さく首を傾げ、去っていった。まるでお姫様のような仕草に見えた。
 すらりと伸びた白い脚と、澄んだ瞳が心と頭に焼き付いてしまい、俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
 拾ってくれた、くしゃくしゃになった楽譜を握り締め、心の中で呟いた。






 ――あの子が、欲しい。どうしても欲しい――






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