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Love adventure
第30章 初恋ーー蒼い目覚め

「この事を他人に漏らしたり、ちゃんと調べなかったりしたら――わかるな?
 証拠はこれに今撮ったからな」

 俺はポケットから携帯を出し、いかにも写真を撮影したフリをしてみせた。
 村上は青い顔のまま、唇を噛み締め何度も頷いた。

「――行っていいぞ」

 引き戸を開けると、転びそうな足取りで村上は逃げて行った。
 俺は、チッと舌打ちをする。

(邪な思いで彼女を見ているのは俺も同じだ――
 けれど……他の男が彼女をそんな風に見つめるのはどうしても許せない――)

 自分の勝手さに呆れ、自嘲気味に笑い更衣室の引き戸を閉めたその時、後ろから肩を叩かれギョッとして振り返る。
 そこには体操服姿のほなみが立っていた。

「岸君ったら、部屋間違えたの?」

 ほなみはクスクス笑う。
 俺は曖昧に笑ってみせたが、彼女が、スッと小さな箱を差し出してきた。

「?」
「具合悪いんだって?勉強のし過ぎで寝不足なんじゃない?
 保健室でもらってきたの。飲んでみてね」

 彼女が俺に渡したのは、風邪薬だった。

「そろそろ着替えなくちゃ。またね」

 ほなみはそう言うと、更衣室に入り引き戸をピチンと閉めた。
 擦れ違った時、甘い髪の香りがして胸が痛み、俺は薬箱を掌でギュッと握り締めた。

 (――誰にも触れさせない……渡すものか――)




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