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Love adventure
第32章 初めての夜
 智也は書斎で調べ物をしていたが、一旦中断し、机の引き出しの中から、ある物を取り出して眺めた。
 それは、掌に収まる、古ぼけた小さな箱。
 中学生の頃、ほなみがくれた薬箱だ。
 彼女から初めて貰った物だから、大切にしている。
 あの日から十四年たつが、智也の中では色褪せない想い出だ。
 
 ――ほなみは覚えているだろうか?

 こんな物をまだ大事に持っている自分に呆れてしまう。

 吉岡がこの事を知ったら、
「意外とセンチメンタルというか少女趣味ね。思い出をしまい込むなんて小さな女の子みたい!……ってかあんたが小さな女の子……ひゃ――!そぐわない!気持ち悪――い!」
 などと、ボロクソに言うのだろう。

 ふたりは東京で元気にしているだろうか。
 行かせてよかったのかどうかわからないところはあるが、吉岡も一緒だからほなみの様子を聞く事も出来るし、良しとするしかない。
 それにしてもーーこの間の夜のほなみとの交わりを頭に思い描くと、たまらなく逢いたくなってしまう。
 溜まった欲望を思い切りぶつける俺に、ほなみは戸惑っていたが、俺も自分の行動に驚いている。
 あの夜、「あなたを愛してる」と告げられて、まさに天にも昇る気持ちだったが――本心なのだろうか?という疑いがもたげてくる。

 結婚して四年経ったというのに、ほなみを手に入れたという実感をずっと持てないままだ。
 仕事で飛び回り一緒に居る時間がなかったせいもある。
 たまに帰った時も俺は相変わらず「好きだ」と言えず、触れる時は欲望を制御していた。
 今までよく持ちこたえられたものだ、と思う。
 だが――初めて彼女を抱いた夜の事を思い出すと未だに苦しくなる。
 当時高校生の俺は当然、今より身体も若く、自分を抑える事が出来ず、ほなみには辛い思いや無理をさせてしまった。




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