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Love adventure
第32章 初めての夜
翌朝リビングで顔を合わせた時、昨夜の事が嘘のように普通に挨拶をされ、俺は拍子抜けした。
だがほなみが俺にコーヒーカップを手渡す時、その手が微かに震えていた。
彼女は、傷ついても悲しくても表には出さず笑っている子なのだ……
顔を見ずに珈琲を飲み干し、ほなみの前を通り過ぎようとしたが、呼び止められて立ち止まる。
「……あの……」
「ん?」
「……何でも、ない」
「そう……じゃあ」
ほなみは、紅く頬を染めていたが、結局何を俺に言おうとしていたのか、わからないままだった。
――今思えばあの時、目茶苦茶になっても躊躇わず抱き締めて『愛してる』と告げるべきだった。
俺の気持ちがつかめないまま、名前だけの結婚生活を送っているその隙間に、誰か別の男が入り込んで来ても不思議ではない。
俺は煙草の煙を吐き、窓を開け、眼下のパリの街並みを眺めた。
電柱は地下に埋められ、道路は凱旋門を中心に円状に広がる。街の至るところからバイオリンやギターなどの音色が流れ、誰かの歌声も聴こえてくる。
店のテナントは赤、青、白の色で統一されーー洗練された画廊に並んでいそうな絵画のような風景。
ほなみに見せたら喜ぶだろうか。
ーーいっそ、ほなみをここにれて来てしまえば――
もう、躊躇わずに愛すると決めたのなら迷う必要はない。
だがどうしても、ほなみの心の中に別の男が住んでいるのかどうか、を知りたい。
『それを――確かめて、俺は……どうするつもりなんだ?』
心の中に、じわりと暗い殺意のような焔が生まれたような気がした。
だがほなみが俺にコーヒーカップを手渡す時、その手が微かに震えていた。
彼女は、傷ついても悲しくても表には出さず笑っている子なのだ……
顔を見ずに珈琲を飲み干し、ほなみの前を通り過ぎようとしたが、呼び止められて立ち止まる。
「……あの……」
「ん?」
「……何でも、ない」
「そう……じゃあ」
ほなみは、紅く頬を染めていたが、結局何を俺に言おうとしていたのか、わからないままだった。
――今思えばあの時、目茶苦茶になっても躊躇わず抱き締めて『愛してる』と告げるべきだった。
俺の気持ちがつかめないまま、名前だけの結婚生活を送っているその隙間に、誰か別の男が入り込んで来ても不思議ではない。
俺は煙草の煙を吐き、窓を開け、眼下のパリの街並みを眺めた。
電柱は地下に埋められ、道路は凱旋門を中心に円状に広がる。街の至るところからバイオリンやギターなどの音色が流れ、誰かの歌声も聴こえてくる。
店のテナントは赤、青、白の色で統一されーー洗練された画廊に並んでいそうな絵画のような風景。
ほなみに見せたら喜ぶだろうか。
ーーいっそ、ほなみをここにれて来てしまえば――
もう、躊躇わずに愛すると決めたのなら迷う必要はない。
だがどうしても、ほなみの心の中に別の男が住んでいるのかどうか、を知りたい。
『それを――確かめて、俺は……どうするつもりなんだ?』
心の中に、じわりと暗い殺意のような焔が生まれたような気がした。