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Love adventure
第36章 惑わすBEAT④
――そしてライブ当日。
ほなみが高熱を出し、急遽一人で参戦する事になったあぐりは、チケットを手にぎゅうぎゅう詰めの会場に居た。
圧倒的に女子ばかりで化粧や香水の薫りで気分が悪くなりそうだったが、気合いで耐えていた。
あぐりの居る場所は500人入る会場のど真ん中。
つまり何処へも逃げ場がないハードな場所だ。
後ろか隅っこへ行けばよかったかしら、と後悔したが、もうこのまま乗り切るしかない。
「キャー!稲川さーん」
「稲川さーん!」
始まる前から、黄色い絶叫が起こる。
SEではUKロックが流れていた。
誰かが拍手をし始め、コールが起こる。
「……BEATS!…BEATS!」
最初はぽつりぽつりだったコールも次第に手拍手と共に大きくなり、会場はスタート前から期待感で包まれる。
突然、後ろからドドッと押されあぐりは倒れた。
立ち上がり振り返るが、誰もあぐりに気を留める人は居ない。
「……なんなのよ!」
カッとなり思わず叫ぶと、真っ暗になり、ステージが眩い光で照らし出された。