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Love adventure
第38章 星の瞬きよりも ①
 綾波はマンションから出て行ったようだ。
 やっとの思いで、震える身体を起こすと、西本が部屋へ入って来た。

「胡散臭い奴がやっと帰ったな――!ハハハ!……?……どうしたんだ」

 彼は、グシャグシャに歪んだほなみの顔を見て目の色を変えた。
 
「に……しくんっ」

 ほなみは、彼の胸に飛びつく。

「どうしたんだよ!あいつに何かされたのかっ?」
「違う、違うよ……何でもない」

 ほなみは、彼のシャツの布をつかみしがみついていた。
 次から次へと涙が溢れて彼の胸を濡らす。

「何でもなくてそんな風に泣くのかよ!」

 彼が本気で怒っていることが、ほなみは嬉しかった。だが、彼に心配をかけてはならない、とも思う。

 (……西君を元気付けに来たんだから……私が泣いたりしたら駄目……)

「本当に大丈夫!」

 精一杯に笑ってみせると、彼の瞳がぐらりと揺れて、先程の綾波と一瞬重なって見えた。
 心配そうに見つめるその表情が愛おしくて、彼の身体をギュッと抱き締めた。

 ーー『せいぜい楽しめ。どうせ今だけだ』ーー

 綾波の冷たい言葉が刃となって胸の奥深くまで突き刺さる。
 ほなみは、また涙が出そうになるのをグッと堪えた。

「……ちょっとだけ、ちょっとだけ……このままで居て……」

 彼は戸惑いをその瞳に浮かべたが、頷いて強く抱き締めて来た。
 ほなみはあたたかい胸に顔を埋めて、彼の匂いを身体中で感じていた。

 (――お願い神様……時を止めるのが無理なら……せめて一日でも長く……側に居させて……)

 叶わないのはわかっていた。
 けれど、願わずには居られなかった――


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