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Love adventure
第44章 焼けるように愛しい
**
智也は電話を切った後、知らず知らずのうちに、爪を噛んでいた。
小さな頃の癖で、散々母に叱られて治した悪癖が今頃出て来るとは、相当追い込まれているのかも知れない。
――吉岡が嘘を付いている事はすぐに分かった。長い付き合いだ。あいつは嘘が苦手だ。
どうする。
ほなみを問い詰めて、もしも俺以外の男の存在が明らかになったら……
正気で居られるのか?
『あなたを愛してる』
あの夜の、ほなみの甘い声が蘇り、それだけで身体じゅうが熱くなった。
けれど頭の中で、疑いを冷静に分析し始めている自分も居る。
「――つっ」
錆びた鉄みたいな味がした。
自分の血だ。
親指が赤く染まっている。
――俺は今どんな顔をしているだろう。
ほなみが見たら怯えるだろうか?
怖がらせたくない。
けれど、どうしたらいいのか。
『あなたを愛してる』
嫌いだ、と言われる方が楽かも知れなかった。
彼女が愛しくて、同時に憎い。
けれど、憎めやしない。
……ほなみは、俺にとって天使で、悪魔だ――
噛み締めた指から滴る血が白いテーブルに落ち、鮮やかな模様を描いた。
智也は電話を切った後、知らず知らずのうちに、爪を噛んでいた。
小さな頃の癖で、散々母に叱られて治した悪癖が今頃出て来るとは、相当追い込まれているのかも知れない。
――吉岡が嘘を付いている事はすぐに分かった。長い付き合いだ。あいつは嘘が苦手だ。
どうする。
ほなみを問い詰めて、もしも俺以外の男の存在が明らかになったら……
正気で居られるのか?
『あなたを愛してる』
あの夜の、ほなみの甘い声が蘇り、それだけで身体じゅうが熱くなった。
けれど頭の中で、疑いを冷静に分析し始めている自分も居る。
「――つっ」
錆びた鉄みたいな味がした。
自分の血だ。
親指が赤く染まっている。
――俺は今どんな顔をしているだろう。
ほなみが見たら怯えるだろうか?
怖がらせたくない。
けれど、どうしたらいいのか。
『あなたを愛してる』
嫌いだ、と言われる方が楽かも知れなかった。
彼女が愛しくて、同時に憎い。
けれど、憎めやしない。
……ほなみは、俺にとって天使で、悪魔だ――
噛み締めた指から滴る血が白いテーブルに落ち、鮮やかな模様を描いた。