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Love adventure
第44章 焼けるように愛しい
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 智也は電話を切った後、知らず知らずのうちに、爪を噛んでいた。
 小さな頃の癖で、散々母に叱られて治した悪癖が今頃出て来るとは、相当追い込まれているのかも知れない。

 ――吉岡が嘘を付いている事はすぐに分かった。長い付き合いだ。あいつは嘘が苦手だ。
 どうする。
 ほなみを問い詰めて、もしも俺以外の男の存在が明らかになったら……
 正気で居られるのか?





『あなたを愛してる』

 あの夜の、ほなみの甘い声が蘇り、それだけで身体じゅうが熱くなった。
 けれど頭の中で、疑いを冷静に分析し始めている自分も居る。

「――つっ」

 錆びた鉄みたいな味がした。
 自分の血だ。
 親指が赤く染まっている。

 ――俺は今どんな顔をしているだろう。
 ほなみが見たら怯えるだろうか?
 怖がらせたくない。
 けれど、どうしたらいいのか。


『あなたを愛してる』

 嫌いだ、と言われる方が楽かも知れなかった。
 彼女が愛しくて、同時に憎い。
 けれど、憎めやしない。

 ……ほなみは、俺にとって天使で、悪魔だ――





 噛み締めた指から滴る血が白いテーブルに落ち、鮮やかな模様を描いた。



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