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第56章 　あの夜の君を抱いて

　智也は、ホテルの部屋で山の様な書類の束に目を通していたが、いっこうに頭に入らず諦めて机の上にふせた。
　来週、アパレルブランドとクレッシェンドのコラボプロジェクトについての顔合わせがある。
　日本に戻って来てはいたが、ほなみには知らせて居なかった。
　苦しい物を吐き出す様に智也は長い息を吐く。
　腹心の中野がよこした、西本祐樹と寄り添っている写真を見てからというもの、どす黒い嫉妬や殺意に苛まされる毎日だった。
　目に映る事実は動かしようも無いのに、嘘だと思いたい気持ちが大きかった。
　ほなみをたぶらかした西本は憎い――
　けれど、ほなみの事を愛している気持ちは変わらない。