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Love adventure
第8章 冷たい雪、熱い吐息
『やっほー!昨日のライヴ楽しかったね!
気分悪かったみたいだけど大丈夫?
打ち上げ、すっごく楽しかったわよ!
ところで今度、BEATSのライヴがあるんだけど行かない?
また、連絡するね。
あぐり 』
智也からのメールは来ていない。
洗面所に行き、乱暴に服を脱ぎ捨てシャワーを浴びた。
涙はもう出て来ないが頭が重い。
憂鬱な気持ちでパジャマに着替え髪を乾かし、洗面所から出た。
テーブルには、持ち帰ったクレッシェンドのサイン入りのCDが入った紙袋が置かれている。
ごみ箱に入れようとしたが、結局捨てる事が出来ず紙袋を抱き締めたまま、ぼうっと座りこんでいた。
どの程の時間、そうしていただろうか。
窓の外に雪がちらついているのが見えて弾かれたように立ち上がり、カーテンを開けて外を見た。
温暖なこの地域で雪が降るのは珍しいが、このまま降り続けば朝には少し積もるかもしれない。そんな事を思いながら下を見て驚愕する。
西本祐樹が、マンションの目の前、別れた場所で立ち尽くしているではないか。
上着も着ていない彼は寒そうに身を縮め、スーツの肩には白い雪が舞い降りている。
ほなみは思わず時計を見た。下で別れてから2時間は経っている。
くしゃみをしたような仕種が上から見えると、いても立っても居られず、ほなみはエレベーターに乗り込んだ。
やっと下に到着して、開いた自動ドアから外に飛び出し、彼に駆け寄りマフラーをかけた。
やはり、氷の様に身体が冷え切っている。
「風邪を引いたらどうするの!大事な喉を痛めたらどうするのよ!」
西本は白くなった唇を僅かに動かし笑った。
「心配してくれるの?」
「もうっ……馬鹿!」
ほなみは、彼の胸をたたいた。
「うわっと!」
彼は顔をしかめたが、胸を殴り続けるほなみの手を取ると、そっと口付けた。
「……西君の……馬鹿っ」
愛おしさが涙と共に込み上げて来た瞬間、強く抱き締められた。
ほなみが背中に腕を回し抱き締め返すと、更にきゅうっと強く力が込められる。
雪が、音も無くふたりの上に舞い降りる。
凍てつく程に冷たい筈なのに、身体が熱くて熱くて、どうしようもなく苦しかった。
気分悪かったみたいだけど大丈夫?
打ち上げ、すっごく楽しかったわよ!
ところで今度、BEATSのライヴがあるんだけど行かない?
また、連絡するね。
あぐり 』
智也からのメールは来ていない。
洗面所に行き、乱暴に服を脱ぎ捨てシャワーを浴びた。
涙はもう出て来ないが頭が重い。
憂鬱な気持ちでパジャマに着替え髪を乾かし、洗面所から出た。
テーブルには、持ち帰ったクレッシェンドのサイン入りのCDが入った紙袋が置かれている。
ごみ箱に入れようとしたが、結局捨てる事が出来ず紙袋を抱き締めたまま、ぼうっと座りこんでいた。
どの程の時間、そうしていただろうか。
窓の外に雪がちらついているのが見えて弾かれたように立ち上がり、カーテンを開けて外を見た。
温暖なこの地域で雪が降るのは珍しいが、このまま降り続けば朝には少し積もるかもしれない。そんな事を思いながら下を見て驚愕する。
西本祐樹が、マンションの目の前、別れた場所で立ち尽くしているではないか。
上着も着ていない彼は寒そうに身を縮め、スーツの肩には白い雪が舞い降りている。
ほなみは思わず時計を見た。下で別れてから2時間は経っている。
くしゃみをしたような仕種が上から見えると、いても立っても居られず、ほなみはエレベーターに乗り込んだ。
やっと下に到着して、開いた自動ドアから外に飛び出し、彼に駆け寄りマフラーをかけた。
やはり、氷の様に身体が冷え切っている。
「風邪を引いたらどうするの!大事な喉を痛めたらどうするのよ!」
西本は白くなった唇を僅かに動かし笑った。
「心配してくれるの?」
「もうっ……馬鹿!」
ほなみは、彼の胸をたたいた。
「うわっと!」
彼は顔をしかめたが、胸を殴り続けるほなみの手を取ると、そっと口付けた。
「……西君の……馬鹿っ」
愛おしさが涙と共に込み上げて来た瞬間、強く抱き締められた。
ほなみが背中に腕を回し抱き締め返すと、更にきゅうっと強く力が込められる。
雪が、音も無くふたりの上に舞い降りる。
凍てつく程に冷たい筈なのに、身体が熱くて熱くて、どうしようもなく苦しかった。