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Love adventure
第9章 雷鳴と
 西本の瞳が陽炎のようにゆらめいて、口元が少し緩みフッと笑いを零したように見えた。
 ゆっくりと近付いて来る彼に包丁を向けたまま、ほなみは後ずさる。

「そ……それ以上近寄らないで!」
「……嫌だって言ったら?」

 彼は一歩、二歩と足を進め、ほなみとの距離を縮める。
 ほなみは、わなないて膝に力が入らず、リビングに置いてある鉢植えにつまずきへたり込んでしまった。

「私に何かしたら……さ、刺すから!」
「俺を刺す?……そんな事できないのはわかってるよ」
「そ、そんな事ないもんっ」
「俺が風邪を引かないか心配してくれるくらい優しいほなみが、そんな事するはずがない」
「ーー本気なのよ!お願い……来ないで!」

 泣きそうになりながら叫んだ時、辺りが閃光で包まれた。轟くような雷の音がズドンと部屋を揺らした。

「……きゃあっ!」

 思わず包丁を手から離して耳を塞いだ時、素早く西本はほなみを抱き締めた。
 耳を掌で覆い小さく震えるほなみの背中を、西本はそっと撫でた。
 寄り添いあうふたりを、時折稲光が照らし出す。振動が身体に伝わる度にほなみは彼の胸にしがみ付いた。






 けたたましい轟音と、目を閉じても入り込む鋭い稲光に、ほなみは遠いあの日の記憶を呼び起こされていた――





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