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Love adventure
第9章 雷鳴と
 彼は、クスクス笑い隣に来て、クレッシェンドのバラードを弾き始めた。

『君の瞳』

 ほなみの好きなバラードだ。

「……一緒に弾いてみる?」

 促され、ほなみは、おずおずと、西本のリードで伴奏部分を弾く。
 弾いているうちに緊張も薄れ、メロディーの世界に没頭していった。

『君のふたつの瞳の中に入り込み そこに死ぬまで留まってもいい』

 不意に彼が歌い始め、ドキリとしたが何とか弾き続けていた。

『君の心に 一番強く 爪痕を残す物それが 今日の僕との思い出であって欲しい』

 耳元で囁くように歌われ、平静ではいられない。指が乱れると、彼の指がほなみの指をそっと絡め取った。

「……どうしたの?」

 西本は、心持ちほなみの方へ身を屈め優しく訊ねた。

(――このまま彼の瞳を見ていたら、何もかも忘れて胸に飛び込んでしまいたくなる)

 危険を感じ、ほなみは椅子から立ち上がりキッチンへ走った。

「スープがあるの。あったまるから飲んでみて?」

 スープボウルをガチャガチャ音を立てて用意していると、後ろからぎゅっと抱き締められる。胸がときめいて息が止まりそうになった。

「……後で、いいから」

 彼の熱い息が耳を掠め、身体じゅうの力が抜けそうになる。
 
 ーーこのままだと、どうなってしまうのか分からない……

 ほなみは、必死にもがき腕から抜け出し、とっさに包丁を握り彼に向けた。





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