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Love adventure
第69章 Marry Me④

荷物を持ちドアに手を掛け、ベッドで眠る愛しい人を振り返ると、瞬間彼が笑ったかの様に見えた。
「……元気でね……」
決心が鈍らない内に勢いを付けてドアを開け、振り返らず小走りで部屋を後にした。
こんな時間に外を歩くのは子供の時以来かもしれない。
都会は朝が早い。
出勤する人々が忙しく駅へ向かっていた。
あぐりも足早に道行く人と同じ方向へ歩を進める。
あの人の居る場所から、百歩、歩いて来た。
――貴方は、あとどの位で目覚める?
目覚めて私が居なかったら、怒る?
泣いて、恨んだりするの?――
「ひゃくじゅうさん、じゅうし、じゅうご……じゅう……ろくっ」
数を数えていたその声が不意につまり、嗚咽に変わった。

