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Love adventure
第71章 対決前夜~智也
 カナは、何度も深呼吸して、どうにか気持ちを落ち着かせた。

「す、すいません……もう、大丈夫です……」
「もう少し冷やした方が良くない?」

 智也がまた顔を覗き込むが、カナは激しく首を振る。
 智也は笑って、ビールのグラスを煽り、一瞬何処か遠くを見つめた。
 カナは、智也の空いたグラスにビールを注いで呟く。

「明日は……色々大変ですね」
「そうだな……」

 智也は長い睫毛の瞳をふせた。

「あ、あの、頑張って下さい……て言うのもなんですけど……気を確かに持って……
 うっ……そうじゃなくて……あああ」

 口ごもるカナに、智也はまた笑った。

「色々ありがとう。君のおかげで明日、心強いよ」

 カナの顔に笑顔が拡がる。

「はい――!頑張りましょうね!」

 智也はワインを二つのグラスに注ぐと、ひとつをカナに持たせ乾杯した。
 一気に飲み干したカナはぷはーっと息を吐いた。

「美味しい――!うん、きっと大丈夫です!何もかも上手く行きます!」

 屈託ない笑顔でカナに言われると、何の根拠もないがそんな気がして来て、思わずこんな言葉が口から出ていた。

「――君を好きになれば良かったのにな」

 智也は、自分でも言ってしまった事に驚き、頭を掻いてカナを見る。
 彼女は白目を剥いて倒れていた。

「飲ませ過ぎたかな?」

 智也は呆れて笑うと、カナに上着をかけた。
 部屋の窓を開け、空を眺める。
 明日は、西本祐樹と対面するのだ。
 そして、ほなみとも――
 智也にはある考えがあった。



――もう、こうするしかない――
 
 瞼を閉じて自分に言い聞かせるようにする。
 祈るような儀式が終わると智也は瞼を開けた。
 その時、流れ星が落ちて、刹那の輝きに思った。

(俺が一番に願うべき事は、何なのだろうか――)

 星空は何も答えず、ただ輝いていた。


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