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第71章 対決前夜～智也

　ようやく咳がおさまると、カナは涙をハンカチで拭い深々と頭を下げた。

｢すいませんっお騒がせしました！
　それと……ただでさえ騒ぎになっているのに更に私が煽るような事になってしまって、ごめんなさいっ！
　お詫びに……私は……岸コーポレーションに骨を埋めますっ！
　そう！一生涯を智也さんに捧げたいと思いますっ！｣
｢ぶっ！｣

　智也は更に吹き出し、ひくひく震えて笑っている。

｢――ねえ……それって、まるでプロポーズみたい……じゃない？｣
｢え、え、ぅえ！？｣
｢……色々とありがとう｣

　切れ長の目でじっと見られて、カナは動揺して何故か自分の頬をドカッと拳で殴った。

｢うきゃあああ痛い｣
｢何してんだ……｣

　智也は冷たいコップをその頬にそっと押し当てた。
　二枚目の顔が至近距離でカナはひたすら照れるが、白目を剥いて智也をなるべく見ないようにして耐えた。
　その奇妙な表情に智也は笑いが止まらない。

｢……君は愉快だね｣
｢……お、お褒め頂いて……かたじけないですっ！｣
｢ぷっ｣

　智也の目が潤み、涙が浮かんで居るように見え、カナはドキリとした。