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第74章 攻防

｢なるほど……そうですか……
　そこの彼も、どうやら満更ではなさそうですしね……｣

　智也の言葉に、三広は真っ赤になり震えている。

｢ほなみちゃんは……優しくて、可愛いし好きです……
　でも……貴方が勘ぐる様な事じゃありません……｣
｢ほう、私がどんな風に勘ぐったと――？｣

　智也はからかうように笑う。

｢いい加減にして下さい。何をおっしゃりたいのか、ハッキリと言って下さらないと、我々も何の為にここに来たのかわかりません｣

　黙っていた野村が立ち上がり、キッパリと言った。
　智也は紅茶を一口啜ると、野村を上目遣いでじっと見た。

｢君も……罪作りな男だな……
　人妻とひとときの不倫を、楽しんだのかも知れないが――｣
｢――！？｣
｢君が迂闊に吉川に手を出したせいで、あいつの人生は大きく狂った……
　恋だ、愛だ、そんな上っ面だけの言葉だけで人の女をどうこう出来ると思っていたのかな？｣
｢……俺は、軽く考えたりしていません……
　彼女の事は、真剣に愛しています｣
｢ほう……そうか。それは結構な事だ……
　せいぜい頑張るんだな……｣

　野村は唇を噛み、拳を固くして口を開き何かを言いかけたが、瞳を床にさ迷わせると、瞼を閉じてうつむいた。
　智也はふと、寂しげに顔を曇らせる。

｢……俺は、全部わかっている……なにもかも……ほなみの気持ちも……｣
｢……智也？｣

　ほなみは、訝しげに彼を見た。