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Love adventure
第11章 セレナーデを弾くように
 西本は、パジャマの布越しにほなみの指先に込められた力を確かに感じた。
 気のせいではない。ほなみは自分にすがるように身を預けている。
 彼女からは「嫌い」「近寄らないで」という言葉を散々浴びせられているが、それはきっと真逆なのだろうーー
 こんなにか弱くて華奢な肩をしているのに、痛いほどに肉をつかむ力は一体どこからくるのだろうか?
 それでいて小刻みに震える彼女のまぶたに西本は切なくなる。

「そんな顔で泣くなよ」
「……女の子に泣かれるのは慣れてるでしょ?」
「そんなんじゃねえよ!」

 彼の鋭い声に、ほなみはビクリと身を固くした。西本は彼女の怯えを察し、とりなすように髪をゆっくり撫でた。

「だから……俺は……ほなみが泣いてるのが嫌なんだよ……見たくないんだ」
「じゃあ、西君の前ではもう泣かない」
「それはもっと嫌だ!」
「ええっ?」
「ひとりで泣くな」

 ほなみは、きっぱりとした彼の物言いと、色素の薄い瞳に胸を撃ち抜かれる。

「他の奴の前でも絶対に泣くなよ」
「他の奴って、誰の事?」
「だから……俺以外の男に決まってるだろ!」

 頭の奥がつんと痛くなり、目の回りがじわりと熱を持つ。また涙が出てしまい、下を向いたが、顎をつかまれて唇を奪われた。
 長く長く、彼の唇はほなみを離さなかった。
 熱い唇同士が合わさり、時折ビリリと震え、首筋から背中に甘い刺激が伝わる。
彼の舌が割り込み、咥内を掻き回し始めると、ほなみは甘い溜め息を無意識に漏らしていた。
 彼の呼吸も乱れている。


(これは……夢?会う筈のなかった西君が、こんなに近くに……)



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